「さァさァ!早く任務を終わらしちゃいましょ!」


目の前でいつも以上の笑顔を作っている自分たちの担当師に驚愕の表情をナルトとサクラは向けた。





流れ行く雲





『ちょっと、ちょっと!カカシ先生、頭どうかしちゃったんじゃない!?』
『ありえないってばよ!先生が時間に遅れずに来てるなんて!?』

ナルトが自来也との修行を終えて久しぶりの7班での任務。
その場にサスケの姿はないが、今の二人にはそんなこと忘れさせるような驚くようなできごと。

なんと!あの遅刻魔のカカシが時間通り!
イヤ、時間通りに来た自分たちよりも早く集合場所にいたのだ!

そして、そのカカシの表情がいつも以上に笑顔。

「ん〜二人とも時間通りだね。でも、5分前行動って知ってる?最低でも5分前には着いておかなきゃ」

『い、いつものカカシ先生じゃない!』
『毒キノコでも食べたのか!?』

信じられないように二人はカカシを見つめる。
いつもなら、集合時間の2.3時間後にくるカカシなのだが、今日は時間よりも早く。
二人が驚くのも頷ける。

固まったように驚いている二人を無視してカカシはさっそく任務内容をしゃべり始めた。

「今日の任務は郵便局のお手伝い。大量の手紙を各家に届けること」
「えぇー!またそんなショボイ任務なんだってばよ。俺、修行して強くなったのに!」
「しかたないでしょ。強くなったって言ったって、ナルトはまだ下忍。
里もいろいろと忙しくて、どこも猫の手を借りたいくらいなんだから。それに今日の任務はこれで終わり。
さっさとやって、さっさと終わりましょ。俺も手伝うからさ」

『『手伝うっ!?』』
『サクラちゃんやっぱりカカシ先生毒キノコたべたんじゃ』
『そうよね!いつものカカシ先生はそんなこと言わないもの!』

そういつも任務のときのカカシは、自分たちがしているのを遠くから見ているだけ。
そのカカシが手伝うとまで言っているのだ。
雪が降るか、天地が引っくり返るんじゃないかと思う。

その間にもカカシは大量の手紙を3人分に分ける。
その量もナルトとサクラの分は両手で抱えられるほどしかないのに、カカシの手元を見るとその4倍。
明らかに量が違う。

「カカシ先生…そんなに多く配るんだってばよ?」
「そうよ。私たちの任務なんだから私たちが配らなきゃ」
「いつも、二人は頑張ってるだろ。だからこれでいいんだよ」

『『何がいいのかわからない!!』』

二人してつっこむが、もうそこにはカカシの姿はない。















任務を始めてから1時間後 異例の速さで任務が終わる。
ナルトの配る手紙もサクラの配る手紙も、配るところが固まっていてすぐに家を見つけられた。
配り終わってから、集合場所に戻ると笑顔のまま立っているカカシ。

「はい!二人とも配り終わったってことで今日はこれで解散っ!それぞれ帰ってよし!」
「「・・・・。」」

それだけ言い放つと笑顔のまま去っていくカカシを唖然として二人は見つめる。

「サクラちゃん!マジでカカシ先生頭のネジが一本取れちゃったんじゃ!?
ありえないってばよ!あのカカシ先生が、遅刻もしなくて任務も手伝って!
そして、いつも以上の笑顔っ!」
「・・・・。」
「サクラちゃん?」
「・・・・ナルト。こうなればカカシ先生の後着けるわよ」
「えっ!?」
「気にならないの!カカシ先生が今日あんなにおかしいわけ!
そして、カカシ先生手紙全部配ったはずなのに一枚だけ大事そうに持っていたのよ!
あれは、ラブレターに違いないわ!」
「ラ、ラブレター!?」

驚くナルトに、そうよ。とサクラは続ける。
確かに、さっきのカカシの手元には一枚の手紙が残っていた。
それを大事そうにもっていたことも事実だ。

「そうと決まれば、尾行よ尾行!」
「なんでそんなことになるんだってばよ」
「ナルトは気にならないの!あのカカシ先生にすっごく影響を与えている人のこと!
それにあんな容姿なのにカカシ先生ってば、いままでそういう噂がなかったのよ!」

こう言う話になると、絶対女の子って熱が入るよな。と他人事のようにナルトは思う。

「とにかく!あのカカシ先生を落とした本人の顔を拝まなきゃ!」
「サ、サクラちゃんっ!?」

ガシっと掴まれたのは自分の腕。

「さぁ!行くわよ!」

乙女パワー全開の女の子に勝てる男の子はいるのだろうか?
ズルズルとナルトはサクラに引きずられながらカカシの後を追う。












『どこに行くのかしら……』
『あっ!カカシ先生女の人に話しかけてるってばよ!』

いざ作戦に入ればなんとやら、ナルトもやる気満々で二人でカカシを尾行中。
丁度、いちごのケーキがおいしいと評判のお店でカカシは立ち止まった。

『会話が聞き取れないてばよ』
『紅先生!っ!バカそれ以上近づいたら気付かれるわよ!』

自分たちの尾行している相手は、上忍なのだ。
気を引き締めてやらなければならない。

「カカシえらく嬉しそうね」
「えっ!俺、顔に出てる?!」
「すっごくね。いつも以上に笑ってたら誰でもわかるわよ」
「うわ。気付かなかった…」
「で、何?」
「何って?」
「あんたが、そんなに嬉しそうなわけ!」
「あぁ〜。これ」
「・・・・・わかったわ。」
「そういうわけで、待ち合わせに遅れちゃうから〜」

大事そうに持っていた手紙の宛名を紅に見せ、片手を挙げてカカシは先へと進んでいく。

『『・・・・。』』
『紅先生じゃないのかよ』
『ん〜、そうなると誰になるの?アンコさんとか?』
『忍じゃないかも』
『その線もありうるわね・・・』

コソコソと話し合いながら気配を消す。

『あっ!』
『何だってばよ』
『ナルト!あれ見てアレ!』
『っ!?カカシ先生がカカシ先生じゃない…』
『絶対カカシ先生の恋人ってあの人よね。顔が見えない!』

すぐそこには、いるのは辺りに花でも舞ってそうなキモイ笑顔を振りまくカカシ。
ある意味イチャパラを読んでるとき以上の笑顔をその相手に見せている。

『こっからじゃ見えないてばよ』
『あぁ!振り向いてくれないかしら!』

カカシの待ち人はすらりとした容姿で黒基調の服を着ている。
カカシが惚れ込んでいる相手の顔を見ようと躍起になる二人だが
その間にカカシたちは歩きはじめてまった。


『これでたらこ唇の不細工な奴だったら笑えるてばよ』
『まぁ…それなら笑えるけど……あっ!建物の中に入っていたっ!』

「「・・・・。」」
「カカシ先生たちこんなオンボロな建物に入って何したいんだろ…」
「そうよね…」

二人の目の前には、ボロボロでもう建物としての役目を果たしていない廃屋。

「でも、相手の顔は見てみたい!ってことでナルト!GO!」
「サ、サクラちゃんっ!?」

ドンと押されて勢いよく扉を開いて中へ

「あれ……カカシ先生いないってばよ」
「えっ?そんなはずは……って、ホント」
「どこに行ったんだ?」

キョロキョロと周りを見渡すが、そこには人影一つない。
はぁ…とため息をついて肩をおろし、帰ろうと踵を返そうとすると

「お前たち何してんだ?」
「「っ!?カカシ先生!?(気配がしなかった!)」」
「で、俺についてきて何をしたかったんだ?」
「……先生てば、気付いてたのかよ」
「俺が気付かないわけないでしょ」

にっこりといつも以上の笑顔で言われ二人は固まってしまう。
カカシの後ろに黒いものが見えなくも無い。

「で?」
「「っ!」」

殺気にも似た黒いオーラを向けられて二人は動けない。

「……カカシ、そこまでにしときなよ。二人とも固まってるって」
「「えっ!?」」

いきなり掛けられた声に驚く。
バッと振り向くとそこには、笑顔をこっちに向けて立っている人影。
それは、先ほど二人が追いかけていた人物だった。







流れ行く雲 弐