クライクライ

コワイコワイ

ダレカココカラダシテ

クライクライ

コワイコワイ

ヒトリハサミシイ

クライクライ

コワイコワイ

イイコニシテルカラ、イイコニナルカラ

ダレカココカラダシテ――・・・・・・・・・








豆と鞄








「んっ?こんな店ココにあったか?」


気になったのは、にぎやかな街の通りにひっそりと建っている店
そこだけ時間の流れが違うようにゆっくりとしているような感じがする
看板もなにも ないその店はどこか違うところから迷い込んできたよう
たくさんの人が道を歩いているにもかかわらず、みな店に気付いていないように通り過ぎて行く
隣には喫茶 店や雑貨屋があるのに、そこだけぽっかりと空間が空いていた


「何の店なんだ?」


一度気になったら、気になって気になってしょうがない
エドはその店に足を向けた
木造のその店は外装を見ただけで、今にも壊れるんじゃないかと思う
俺が入った途端屋根が抜けて落ちてくるってことないよな・・・
そんなことを思いながら扉に手をかける


「うわァ。」


ギィィと音を立てて開いた扉
その向こうにはたくさんの本
店に置いてある棚も隙間なく本で埋まり、床の上にもうず高く 本が積まれている


「すげぇ。」


ミシミシと床が軋む音とコツコツと床の上を歩く音
店の中にはエドしかいないようで、エドの声が反響した


「これ何って読むんだ?」


『Lapin qui n'aime pas la solitude』
そう題名が書かれている絵本
表紙には一匹のうさぎが涙を溜めて寝 ている絵が描かれている
そこに書かれている言葉は見たことのない言葉
周りを見るとほとんどがそんなもので、読めないものが多い
たくさんの言葉と文字
絵本が置いてあると思ったら、これでもかってぐらい分厚い本
一ページのコマごとに絵が描かれている本もあれば、長い紙をぐるぐるとまきつけたようなもの
あれをすべて伸ばせばいったいどれくらいの長さがあるのか

世界中の言葉と文字を集めたんじゃないかと思う空間
息を吸うと紙の匂い
それは外の汚れ た空気よりも心地よく感じる


「うぇー。こんなものまであるのかよ」


エドが目をやった先には、やっと見つけた自分の国の言葉で書かれてある 本
『ペットの飼い方(爬虫類編』『初めてのお菓子作り』『人体各部の名称』
などというジャンルごっちゃなものたち
日常的に役に立ちそうだと思うものから、こ れは絶対専門のものだろ。と思うものまで
どう見ても普通の本屋じゃなさそうだ


「錬金術〜。賢者の石〜。」


これだけの量の本があるん だ
賢者の石に関係のある本が置いてあっても不思議ではない
そう思うや否や、少し意気込んで店の中をくまなく歩き回る





「ん っ?」


ほこりをたくさん被っているソレ
表紙にはどこかでみたことのあるような扉のイラスト
どこで見たっけなぁー。と首を傾げながら手に取る
題名は書かれていない。開くと同時に大量のほこりが宙を舞った


「ごほごほっ。うわっ。」


咳き込みながら見ると、そこには何とか読めそう文 字の列
たくさんのほこりを被っていたことからも分かるが、長い間放置されっぱなしだったその本は、いたるところが傷んでいて、文字を読むのもやっと
周りを見渡 すと店の隅の方に置いてある小さな椅子が目に入った
それは踏み台の役目も果たしているのだろうか、椅子にも傷が目立つ
その椅子に腰掛け、もう一度本を開い た














「ヤベッ!もうこんな時間っ!?」


街が見える小さな窓から外をみる と、空がオレンジ色に染まっている
昼食を取るために図書館からでてきて、食べた後にこの店を見つけて・・・
図書館に自分の弟を残したままにしていることを思い 出して顔を青ざめさせる
この時間はもう図書館は閉まっている。アルが先に宿に戻ってるといいんだけど・・・
そう思いながら本を閉じる


「んっー。」


意外に長い間本を読んでいたため肩が凝る
伸びをして背筋を伸ばしたから立ち上がった
腕を回すとコキコキと鳴る肩
本を持って、もとあっ た棚へ向かう
はぁ、アルが怒ってないといいけど・・・
そんなことを考えていたエドは周りのことをよく見てなかった


「「うわっ」」

「「たたたたっ」」


エドが振り返ると目の前は人影
でも、体は前に進もうとしているので止まれない
次の瞬間体に衝撃が 走る
どんとぶつかった二人は床に尻餅をついた

エドの目の前にいたのはシルクハットを被った人
そのシルクハットを深く被っているせいで相手の顔はみ えない


「大丈夫かね。」
「あっはい。」


手を差し出されて、それにつかまって立ち上がり、服に付いた汚れをパンパンと払う。


「難しい本を読んでいるんだね。」


んっ?
最初はなんにことを言われたのかピンとこなかったが、棚のほうを差されて、さっきまで自分 の読んでいた本のことを言われているのだと分かった


「・・・・はい。探しているものがあって」
「・・ほう。勉強熱心なんだね」


そう言って白 い手袋をつけた手で自分の顎をなぞる
その人はどうやら店の主人ではなく、自分と同じ客らしい
足元には旅行用のトランクが置いてあった





「そうだ...。『まきますか?まきませんか?』」
「へっ?」


まきますか?まきませんか?
一体何をまくと言うのだろ う。撒く?巻く?蒔く?
いきなりそんなことを言われても話の繋がりが全然わからない
ほうけた顔をしていると、エドに向かってもう一度その帽子男が尋ねてくる


―――まきますか?まきませんか?







「・・・ま、まきます。」


まだ、何のことを聞いてきているの か分からなかったが、どちらかを答えないといけないようだ
エドが『まきます』と答えると、帽子男の頬が少し緩んだような気がした


「そうか。君なら大切 にしてくれるだろう。」
「えっ?」


そう言われて手渡されたのは、その人の足元に置いてあったトランク


「大切にしておくれよ。」


同時にゴーンゴーンと店の時計が鳴った
時計の方に目をやると、針は太陽が沈みきった時間を差している
早く帰らないとアルが心配するっ!
しかし、手には渡されたトランク
なぜ渡されたのかはわからないが、返したほうがいいだろう


「あのこれ・・・・えっ?」


もとの位置に 視線を戻すとそこには誰もいない
時計の時間を告げる音だけが聞こえてくる

店の中にはエド一人


「このトランクどうすればいいんだよっ!」


店の中にはまだ店の主人は居らず、トランクを預けることもできない
走ると今にも床が抜けそうなミシミシと言う音を無視して入り口まで走る
バン っ!と勢いよく扉を開けるが、外には帽子男の姿はなかった―――・・・・・・・・・



















「ただいまー。」
「兄さんっ!こんな時間までどこに行 ってたんだよ!」


部屋に入ると最初にアルが顔を出す
エドのことを心配していたようで声色からもそのことがわかった


「ワリィ。ワリィ。ち ょっと面白い本屋見つけてさ。」
「面白い本屋?」
「そうそう、世界中の本が集められてるっぽい。」
「っ!?それなら石の情報も・・・。」
「あるかもしんね ぇ。」
「やったね、兄さん!」


微かに見えた希望に嬉しくなる


「・・・ん?そのトランク何?そんなの持っていってなかったよね。」


アルが気になったのは、エドが持っいるトランク
昼食に出たときはそんなもの持っていなかったはずだ
それにエドの旅行鞄はベットの横に今も置 いてある
旅には必要最低限のものしか持って行かない兄なのに、トランクを二つも用意することがおかしい
エドがトランクを部屋の中に入れるのを見ながらアルは 首を傾げる


「その本屋で、シルクハットを被った男に渡された。」
「えっ?」
「いきなり、『まきますか?まきませんか?』って言われたから『まきま す。』って答えたんだよ。そしたら『大切にしてくれ』って。」


まきますか?まきませんか?    一体何を・・・・?


「その男の人は?」
「わ かんねぇ。トランク返そうとしたら少し目を離した間にどこかに行っちまったから。」


そう言って、ゴトっとトランクを床に置く


「だから、明日その 本屋に行くついでに返そうかと思って、まぁいるかはわかんねぇけどな。」
「その方がいいよね。・・・ってこのトランク結構重い。」
「そうなんだよ。持って帰ってくるの も疲れた。」


大きさの割にはズシっとくる重さ
何が中に入っているのだろう?


「開けてみるか・・・。」
「ちょっと、兄さんっ!」


エドはトランクをアルから取り上げて床の上に横にした
ココに持って帰ってくるまで気になっていたこと


「それに、『大切にしろ』って言わ れたんだぜ。中に何が入っているか知らねぇと、どう扱っていいのかわかんねぇし。ガラスとか割れ物だったらどうするんだよ。」
「そ、そうだけど・・・。人のものを勝手に 開けるのは・・・」
「アルも気になってるんだろ。」
「うっ。」
「ってことで開けるぞっ!」
「兄さんっ!?」


トランクの留め金の部分に手を当て てパカッとトランクを開ける
トランクの中に入っていたものは













「「人形?」」


穏やかな顔をして丸まって入っている人形


「すげぇ。やわらけぇ。」


それは精巧に作られているようで肌も触ってみるとプニ プニとしている
それをトランクの中からゆっくりと取り出し持ち上げてみる
服も細かいところまで作ってあってその人形の服にはチェック柄のうさぎのフードがついて いた
長袖のヒラヒラのフリルのいっぱい付いた服
服の腕の袖をめくってみるとそれも精巧に作られているのか関節もキレイに曲がる
下はフードと同じチェック 柄だが短いズボン
しかし、長い靴下を履いているので間接の切れ目が見えない
傍から見たら、小さな女の子にしか見えない


「すごいね。」
「あぁ。」


自分は男だが、小さいころはウィンリーにイヤというほど人形を見せられた
人形遊びの相手にされたこともあったし
その人形も人間に近い 作りをしていたが、これはそれ以上
黒い髪も人間の髪のようにサラサラとしている


「んっ?何だこれ?」


人形を細かく見ていたら発見し たのは背中にある小さな穴
それは服に隠れて分かりにくいところにあったが確かに穴が存在する


「兄さんこれじゃない?」


アルがエドに 見せたのは小さなぜんまい
そのぜんまいの先の大きさは丁度背中に開いている穴と同じくらいだった


「巻いてみるか。」
「えっ!?ちょっ!?」


人様のものなのに勝手なことをしていいのか
アルの静止の声を聞かずにエドはぜんまいを巻く
聞こえてくるのはキリキリとネジが回る音


「これでいいのか?」


ぜんまいを巻き終わった人形をベットの上に座らせるが、じっと待ってみても何の反応もない


「なんだ。 何にもねぇじゃねぇか。」
「兄さん・・・。」
「ふわぁ〜。」
「「えっ!?」」


「うにゅ。眠い・・・。」


勢いよく振り返るとそこには眠そうに 目をこする人形


「前、起きてから464,283時間・・・。今何時?」


そう言った人形は自分の首にかかっている懐中時計を見た


「もう、9時・・・。どうりで眠い・・・わけだ・・・。」


人形は今にも眠りそうに喋る
ベットを自らの力で降り眠そうな足取りでトランクの前まで歩 く


「おやすみぃ」


パタムと音を立ててトランクが閉まった


「「・・・・。」」


トランクの中に入っていった人形を見つ めるエドとアル
部屋の中を静寂が包む・・・・・








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ぼやき・・・・。
はい。新しくやっちゃいました。主人公が人形な新連載っ!
連載と言いつつも、これは中編ぐらいなの か?
紅翼と同じように思いついたときに打っていくので更新スピードは鈍いです。
はははっ。まぁ、よろしくしてやってください。

書いてて、アルには重い軽 いの感覚があるのか分からなくなった。
えっ。温度を感じるのはなかったよね?重い軽いはあるのか・・・・。
もう書いちゃったけど僕のサイトのアルは重い軽いぐら いの感覚はあると言うことで!(えっ?
ソレじゃないと、あるとか1tぐらいのもの軽がるともちあげてそうだよな・・・。
イヤ、その前に鎧が潰れるか・・・。