じぇりー・びぃーんず

01.メリーゴーランド / だってあなたは、あたしだけの白馬の王子様。
02.水面 / 水面に映るは笑顔のあなたとあたし。
03.観覧車 / やっぱりあなたは世界一かっこいい。
04.ネオンライトの街 / また、あなたと同じ時を過ごしたいな。
05.大好きな人の隣 / “おはようのキス”してあげるね。












































あなたといるとせかいがかがやく。


じぇりー・びぃーんず


01.メリーゴーランド

「ねぇねぇ、!次はあっち!」
「はいはい」
「早く〜!!」
「やちる。気をつけないと転ぶぞ」
「だいじょうぶっ!」
カラフルな風船。楽しそうな声。夢のような世界。
今日は待ちに待った非番の日。
と一緒にお出かけ。
この日のためにに非番の日はいつかって聞いて、一緒にお休みをとったんだ。
現世での遊園地。
くるくる回るコーヒーカップ。
風を切って走るジェットコースター。
どれも素敵で魅力的。
次はどれに乗ろうかな?
そんなことを考えながらの手を引っ張っていく。
現世だからも今日は洋服を着てる。
いつも着ている死覇装姿のもかっこいいけど、洋服を着ているもすっごくすっごくカッコいい。
すれ違う人たちがあたし達の方を時々見るけれど、今日のはあたしだけのもの。
!これ乗りたい!」
そう言って、あたしが指差したのは“メリーゴーランド”
白い木馬に、輝く馬車。
女の子の夢が詰まった乗り物ばかり。
「おう。行ってこーい。・・・・って!ちょっと!やちる!?」
ぐいぐいとの手を引っ張る。
あたしはと一緒に乗りたいんだもん。
だって、今日はとのデートなんだから!
あたしが「現世の遊園地に行きたい」って、に言って二人でお出かけ。
剣ちゃんもつるりんもナルちゃんも今は尺魂界。
二人だけのお出かけだから“デート”って言っていいよね?
入り口で係員さんに「素敵なお兄さんだね」って言われたから、あたしは大きく微笑んだ。
の手を引っ張って、目指すは白い木馬。
後ろで「はぁ」とが諦めのため息をついたのがわかる。
は私よりずっと大人で“メリーゴーランド”に乗るのは恥ずかしいんだと思った。
でもね。でも・・・・・・。
「お手をどうぞお姫様?」
笑顔でそう言ってくれたに、あたしの頬も緩む。

だってあなたは、あたしだけの白馬の王子様。



















































あなたといるとせかいがかがやく。


じぇりー・びぃーんず


02.水面

水面に太陽の光が反射してキラキラ。
花びらが舞い踊ってヒラヒラ。
自分の掌を見つめてみてもその先に大好きな人の手はない。
どうして、の手を離してしまったんだろう?
一緒にお出かけして、嬉しくて嬉しくて。
浮かれすぎてたのが悪かったのかな?
噴水の淵に座って、足元の石ころを蹴る。
あたしが自分のことで精一杯で周りのことを見ていなかったから。
掌を握ったり、開いたり。
繋いでいた手は切れちゃった。
これから、どうしよう。
を探そうにも、周りには人がたくさん。
この中からを見つけられるかな?
もし、が迷子になったあたしに呆れて帰っちゃってたらどうしよう?
折角の非番の日だったんだ。
だって、ゆっくり休みたかったはずなのに。
あたしがわがまま言っちゃったから。
「遊園地に一緒に行きたいって言わなければよかったな」
足元には、もう蹴る石ころがない。
「遊園地はもう飽きられましたか?お姫様」
!?」
聞いたことがある声がして、振り向くとそこには
肩で息をしていて、そうとう走ってあたしを探してくれていたことがわかった。
あたしの隣に腰を下ろして「疲れたー」と呟いているの手をギュッと握る。
ガシと撫でられるあたしの頭。
それだけで、あたしは安心するんだ。
ホントはね。ホントは、怖かったんだ。
尺魂界には知っている人ばっかりだけど、現世には知ってる人なんて一人もいなくて、あたし一人。
は傍にはいなくて、知らない人に囲まれて。
一人が寂しかったんだ。
そしたら、動けなくなって。
はあたしの大好きな人だから・・・・・
どこに居たって、どんなに時間が掛かったって・・・・
見つけられるって自信はあったんけど・・・・・・
動かないとには会えないとわかってるのに。
怖くて、寂しくて。
「あー。やちる、ちょっとここで待ってろよ」
「えっ?」
顔を上げると、あたしの手を離して人ごみの中に紛れていく
お、置いてかれてりしないよね・・・・?
少し経って、また人ごみの中から現れたの手には、ソフトクリーム。
あたしの右手に甘い甘いソフトクリームを。左手はもう離さないように堅く繋いで。
「次は何に乗る?」
そう笑顔で言ってくれる、がやっぱりあたしは大好きだ。

水面に映るは笑顔のあなたとあたし。


















































あなたといるとせかいがかがやく。


じぇりー・びぃーんず


03.観覧車

!次は何に乗る!?」
「ちょ、やちる・・・。たんま。少し休もう」
疲れたようにがあたしに声を掛けてくる。
だめだめ。時間はそんなにないんだから!回れるだけ回らなくちゃ!
あたしは、の手をしっかり握って少し小走りぎみで歩いていく。
そんなあたしに、「わかった!わかった!わかったから!ゆっくり歩こう!」って言いながら付き合ってくれるは、やっぱり優しい。
メリーゴーランドにもゴーカートにもバイキングにも乗った。
じゃぁ、次は何に乗ろう?どこへ行こう?
ドキドキとワクワクが止まらない。
ふと思うのは、あたしがもう少し大きかったらよかったのに。ってこと。
そしたらと一緒になんにでも乗れたのに。
身長制限があるって何だか悲しい。
尺魂界にもどったら、たくさん牛乳を飲まなくっちゃ。
左手にはパンフレット。右手にはの大きな手。
もうの手は離さない。
の手をぎゅっと握り返す。
太陽はもう傾きかけていて、もうすぐ魔法の時間が終わってしまう。
と一緒に過ごせてすっごく楽しかったんだけど、やっぱり終わってしまうって思ったらなんだか寂しいな。
「ねぇねぇ。!最後にコレに乗ろう!」
を引っ張って連れて行くのは、遊園地で一番目立っている乗り物
魔法が解けるのは寂しいけど、最後の最後だけ誰にも邪魔されない二人だけの空間にいたいから。
「わわわっ!ちょ!やちるっ!動くな動くなっ!じっとしてろ!」
「見てみて、!あっちはさっき乗ったバイキング!あっちはゴーカート!」
狭い空間の中をあたしははしゃいだように動き回る。
あたしの動きに合わせて、小さな箱がゆらりゆらり。
天辺まで回ってきたそれに、下にいる人たちが小さく見える。
人がアリみたいって言うと、「いや、ゴミみたいつーんだよ」っと真面目返してきたに少し笑ってしまった。
そういえば、このまえあたしのために現世から持ってきてくれたビデオの悪役がそんなこと言ってたね。
高いところからは園地やその先の景色まで一望できて、夕日に照らされたそれらはとってもステキ。
今日回ったところを箱の中をくるくる回りながら見ていたら、がしっと捕まえられるあたしの腕。
「はいはい。じっとしてましょうねー」
あたしは、の膝の上。
「えー」
不満の声で隠したのは、ちょっとだけドキドキする感情。
ふと、のほうを向くとの顔にも暖かいオレンジ色の光が当たっていた。
「・・・ん?やちる、どうした?」
「なんでもなーい!」

やっぱりあなたは世界一かっこいい。


















































あなたといるとせかいがかがやく。


じぇりー・びぃーんず


04.ネオンライトの街

ちかりちかり。きらりきらり。
どれもこれも尺魂界にはない光。
「現世の夜って明るいんだね。お月様もお星様も見えないや」
「だよな。俺も初めて見たときは驚いた」
でも驚くんだ」
「なんだよ、その言い方。俺は化け物か」
他愛もない会話をしながら夜の街を歩く。
光であふれた街はきれいだけど、やっぱりあたしは人工的な光より自然の光の方が好きだな。
「あのね、。今日はとっても楽しかった!」
「そうだな。・・・・・やちるが迷子にならなければ」
っ!」
あははって笑うの背中をポカポカと叩く。
そのうち「落とすぞー」なんていいだすから、ぎゅっとの首にしがみついた。
そしたら、また笑い声を上げる
そんなに笑わなくても!
手には遊園地でもらった赤い風船。
ふわりふわりと、光のスポットライトに照らされる。
と一緒にいれて今日はホントに楽しかった。
「また行こーね。
「おう」
あたしがおぶされてるの背中は大きくて暖かくって、それでいて今日はすこしだけ汗臭かった。
だって、あたしを探すのにたくさん園内を走ったみたいだったから。
ねぇねぇ、
あたしがいなくて寂しかった?
あたしがいなくて心配した?
少しでもの心の中にあたしがいればいいな。
の歩く速度によって、背中がゆらゆらゆれる。
少し汗臭いの背中だけどなんだか安心して、まぶたが落ちてくる。
遊園地でも、たくさんたくさんお喋りしたけど、まだまだあたしはと楽しいお喋りをして笑っていたい。
なのに、なのに・・・・・
「やちる?・・・・・・あー。寝たか」
そう言ったが、クスリとまた笑ったのをあたしは知らない。

また、あなたと同じ時を過ごしたいな。


















































あなたといるとせかいがかがやく。


じぇりー・びぃーんず


05.大好きな人の隣

「んっ」
暖かいものに包まれてる感覚がして意識を浮上させる。
その暖かさは気持ちよくって、ずっとこのまま寝ていたい。
うっすらと目を開けると眩しい朝の光と誰かに優しく抱かれている感覚。
剣ちゃん・・・・・・?
あたしいつの間に、尺魂界に帰ってきたんだけ?
昨日はと現世に遊びに来て、遊園地に行って・・・。
帰りにあたしは疲れて寝ちゃったんだ。
が送ってくれたのかな?
なんであたしは、あの時寝ちゃったんだろう。
もうすこしだけ、とのお出かけを満喫したかったのに。
静霊艇ではもあたしも隊が違うからなかなか一緒の時間は取れなくて、久しぶりの一緒の時間だったのに。
物寂しさを感じて、目をパチリと開ける。
「・・・・・・・っ!?」
バッチっと自分の口を押さえる。
あたしの隣にはスゥと寝息を立てたが。
感じた温もりはのものだった。
ずっと、あたしを抱いて寝ててくれたみたい。
驚いてムクリと起き上がると、そこは見慣れない天井。
そう言えば、が夜も遅いし明日は午後出勤だから現世に泊まって行こうか?って言ってたけ。
が一緒に寝ていてくれてたってことだけで、あたしは嬉しくなる。
ミシミシと慣れないベッドが音を発てた。
うわー。肌がつやつや。
ぷにぷにといつのもお返しのごとく、の頬をつつく。
柔らかい。
あっ。そう言えば、寝ているを見るのは始めてかも。
あたしが一緒に昼寝をしよう!って言ったときは、いつもあたしの方がいつの間にか先に寝てるし、いつもが起こしてくれる。
和やかに寝ているを見て、なんだかあたしは笑顔になった。
「・・・・・んっ」
は少し身じろぎしたけど、まだ起きてないみたい。
時計を見るとまだまだ朝日が昇り始めたばかりの時間。
もう少しと一緒に寝てていいかな?
一緒の時を満喫していいかな?
暖かい布団の中にもう一度もぐる。

あなたといればどこにいてもそこはステキな場所。

ねぇねぇ。
―――― が起きたら“おはようのキス”してあげるね。







あなたといるとせかいがかがやく。









Titel by 凛 《きらきら輝く場所》










06.06.11