ろりぽっぷ・きゃんでぃ

01.金平糖 / それまで待っててね?
02.パフェ / 今度はあなたと食べられたらいいな。
03.わたがし / ねぇねぇ、あたしは『いい女』?
04.苺ケーキ / 目指すはあたしの大好きな人のところ。
05.キャンディ / 涙はいつの間にか止まっていた。












































あなたがとってもだいすきなんです。


ろりぽっぷ・きゃんでぃ


01.金平糖 

!」
「・・・へっ?グェ!」
勢いよく背中に飛び乗ると苦しそうな小さな叫びを上げる
あたしそんなに重くないよ?
剣ちゃんよりも小さいけど、いい匂いのするの背中。
陽だまりのように暖かくて、といるとふわふわした気分になってくる。
「・・・何だやちるか。オマエ重くな――」
女の子にそんなこと言っちゃダメなんだよ!」
「はいはい。わかりました〜」
飛び乗ったときに崩れた書類を直しながらうんうんとは頷く。
ホントに分かってる?
肩越しに尋ねると「わかってるって」っとまた返してくる
サラサラと振り向くときに顔に当たる髪の毛がくすぐったい。
「で、今回は何だ?一角や弓親と鬼ごっこ?それとも瀞霊廷内探検か?」
「どれもちが〜う」
「じゃぁ、何だ?」
首を傾げて考え始める
うん、。どれも違うんだよ。
あたしがココに来たのはに会いたかったから。
が大好きだから。ただそれだけ。
「あっ!ほらほらやちる、肩から降りた降りた。俺、書類提出してこないといけないから」
目の前には大きな扉。
「え〜」
「『え〜』じゃない、俺は忙しいの。また今度な」
もうちょっと一緒に居たかったのに。
ストンと肩から降ろされて頭をグシャリと撫でられる。
!髪の毛グシャグシャになっちゃうよ!」
「髪の毛グシャグシャでも、やちるはかわいいから大丈夫だ」
何が大丈夫なのかわからないよ。
に会おうと思ってナルちゃんに綺麗に梳いてもらったのに。
「ほら」
「えっ?」
上を向くと目の前に差し出されているのは小さな袋。
「金平糖。やちる好きだろ」
「っ!ありがとう!」
「はいはい。だからぶすくれない。かわいい顔が台無しだぞ」
「ぶすくれてないよー」
そう言うとはまたグシャリとあたしの頭を撫でて扉に手をかける。
暖かなの背中も、サラサラの髪も、頭を撫でてくれた手も行ってしまう。
「ねぇ!」
「ん?」
「あたしね、のことが大好きなの。すっごく、すごーく大好きなの。
だからあたしが大きくなったら結婚してくれる?」
から貰った金平糖を握り締める。
「いいぞ。やちるがいい女になったらな」
パタンと扉が閉まった。

、あたしぜったいに、ぜったーいに『いい女』になるからそれまで待っててね。



















































あなたがとってもだいすきなんです。


ろりぽっぷ・きゃんでぃ


02.パフェ

「副隊長食べないんですか?」
「いいの!あたしはお腹すいてないの!」
「つっても、朝から何にも食べてねぇじゃねぇか」
あたしの目の前にはおいしそうなフルーツパフェ。
宝石みたいな赤い苺。チョコがかかった黄色いバナナ。グラスからはみ出ている大きなメロン。
そして一番天辺にちょこんとかわいらしく乗っかったサクランボ。
色とりどりのそれは、とってもとってもおいしそう。
「隊長も心配してましたよ」
「おい、チビ。食べるモンも食べねぇと大きくならねぇぞ」
「っ!ちゃんと食べてるよ!」
「そうか〜?このごろ食事の量も減らしてるらしいし、おやつも食べてねぇじゃねぇか」
「ちゃんと食べてるから大きくなるの!」
ちゃんと食べてるよ!
早く大きくなれるように今日の朝も牛乳たくさん飲んできたもん。
・・・嫌いな野菜も少しは食べたもん。
「はぁ〜。弓親どーすんだよ、コイツこのままじゃ倒れるぜ」
「そうなんだよねぇ・・・」
ため息をついて黙り込む二人。
ココに連れてきてくれたのは、最近食欲のないあたしを心配してくれたからだってわかってる。
でもでも、これを食べたら・・・。
「副隊長・・・なんで食べてくれないんですか?」
「あたしは『いい女』になるんだもん!」
「『いい女』だぁ?」
あたしは『いい女』になるんだから。
早く『いい女』になってと結婚するんだから。
つるりんが不思議そうな顔で見てくる。
だって、この前だってに重くなったって言われたし・・・。
とにかく!あたしはこれ以上重くならないようにしないと。
コレじゃぁ、の暖かい背中にも乗れないようになっちゃうよ。
おいしそうなパフェから顔を背けて下を向く。
だからパフェもいらないんだもん。
「チビ。なんでそんなに『いい女』になりたいのか知んねぇけどな。
『いい女』つーのはやせ我慢なんてしねぇーんだよ。
早くいい女になりたいんなら、たくさん喰ってデカくなれ」
つるりんがあたしの頭をガシガシ撫でてくる。
があたしの頭を撫でてくれるのとは全然違う。
少しぐらい食べても大丈夫?
大きくなるのが『いい女』?
「そうだね。副隊長がこのパフェ食べないんなら、僕と一角で食べちゃうよ?」
「おっ!それいい!」
「ダメっ!あたしが食べるんだからっ!」
そう言ってスプーンを奪い取ると、つるりんとナルちゃんは少し笑ってこっちを見てきた。
ほっぺがとろけ落ちるぐらい、おいしいおいしいパフェ。

今度はあなたと食べれたらいいな。


















































あなたがとってもだいすきなんです。


ろりぽっぷ・きゃんでぃ


03.わたがし

「ねぇねぇ、乱ちゃん。あたしキレイ?」
「とってもキレイよ。だけどちょっとじっとしててね。動くとずれるから」
じっと動かないように椅子に座る。
ホントは今すぐ駆け出してのところに行きたいけれど
キレイなあたしを見てもらうんだから、ちょっとの間はがまんがまん。
外はオレンジ色の提灯の明かりや笛の音であふれてる。
ふわふわと漂ってくるのは、おいしそうなソースの匂い。
あれは焼きそばかな?たこ焼きかな?
匂いだけでお腹いっぱいになりそう。
「はい。できた」
「うわぁ〜」
乱ちゃんがしてくれたお化粧はあたしがあたしじゃないみたい。
頬もうっすらピンクに染まってて、唇もつやつや輝いている。
「じゃ、次は爪ね」
はい。っと手を乱ちゃんの前に手を出すとキレイなピンクに染まっていく爪。
乱ちゃんって魔法使いだね。
そう言うと乱ちゃんは少し笑って、やちるちゃんも魔法使いになれるわよ。っと言ってくれた。
あたしも早く魔法を使えるようになりたいな。
そしたら、毎日キレイなあたしをに見てもらえるのに。
ぴょんと椅子から飛び降りて、着物の皺を乱ちゃんに直してもらう。
着物もキレイなピンク色。爪と同じで白い花がアクセント。
この着物も今日のために乱ちゃんと一緒にお店を何件も回って選んだ。
はキレイって言ってくれるかな?
いつもと違うあたしだって気付いてくれるかな?
下駄をコロンカラン鳴らしながら歩く。
いろんなお店が並んでる中で目立つ目立つ白い色。
ふわふわのソレはみたい。
わたがしをお店の人から一本貰って、待ち合わせの場所に急ぐ。

ねぇねぇ、あたしは『いい女』?


















































あなたがとってもだいすきなんです。


ろりぽっぷ・きゃんでぃ


04.苺ケーキ

「モモちゃん!モモちゃん!まだまだ?!」
「やちるちゃんもう少し待っててね。余熱で冷やさないといけないから」
「はーい!」
目の前にはぷっくり膨らんだおいしそうなケーキ。
『いい女』は料理もうまくできないといけないの。
おいしそうなケーキの匂いはの匂いみたい。
「じゃ、生クリームをぬって苺を好きなようにのっけて」
ペタペタ一生懸命泡立てた生クリームをぬっていく。
このケーキもあたしが頑張って作ったの。
お砂糖も小麦粉もモモちゃんに手伝ってもらってちゃんと計った。
生クリームで白くなったケーキはとってもとってもおいしそう。
少し味見をしてみたいけど、まだまだ食べちゃダメ。完成してないんだから!
真っ赤な苺をたくさんのっけてやっと完成!
漂ってくるのは生クリームと苺の甘酸っぱい香り。
「おっ!イイもん作ってるじゃねぇか」
「ホントだ。おいしそうな匂い。雛森さん何してるの?」
あたしの作ったケーキの匂いにつられてレンレンも片目もやってきた。
「やちるちゃんがケーキの作り方教えてって言うから一緒に作ってるの」
「へぇー。うまそうじゃねぇか」
「レンレンだめ!」
ペチリといい音がしてレンレンが手を引っ込める。
このケーキはレンレンが食べちゃだめなんだよ。
のためにあたしが作ったんだから。
「ちょっとぐらいいいじゃねぇか」
「ダメったらダメなの!」
おいしそうな苺のケーキ。
一番最初にに食べてもらうんだから。
「阿散井君、よしなよ」
「ちぇ」
そっとそっと崩れないように箱の中に入れる。
はおいしいって言ってくれるかな?
『いい女』だって認めてくれるかな?
大丈夫。いっぱいいっぱいのことを思って作ったんだもん。
きっときっとおいしいよ。
「やちるちゃん気をつけてね」
「うんっ!」
ゆっくりゆっくりケーキが崩れないように歩く。

目指すはあたしの大好きな人のところ。


















































あなたがとってもだいすきなんです。


ろりぽっぷ・きゃんでぃ


05.キャンディ

どうしよう。どうしよう。
涙が目のふちまであふれてきて、今にも流れ出しそう。
それをぐっとこらえて、頭をいっぱい回転させる。
のために頑張って作ったケーキ。
に食べてもらいたくて一生懸命作ったのに
今、あたしの手元にあるのは潰れてしまった白い箱。
早くに会いたくて浮かれていたのが悪かったのかな?
転んでペシャリと潰れてしまった。
どうしよう。どうしよう。
これじゃ、のところにいけないよ。
ケーキもダメになっちゃったし、今のあたしは泣きそうだもん。
こんな顔をに見せたくない。
「・・・・どうしよう」
「どうした?」
「っ!!?」
振り返るとそこにはの姿。
「何か今日のやちる元気ないな。何かあったのか?」
ごめんね。ごめんね。ごめんね。
「うおっ!?どうした!?」
「う゛ー・・・・ひっく」
「やちるー。どうしたー?」
に心配そうな顔をさせたくないのに、あたしの涙は止まらない。
「ひっく・・・あた・・し・・ね。・・・に、食べて・・・もらいた・・くて、ケー・・キ作ったの」
は何にも言わずに、死覇装の袖で涙を拭いてくれる。
「・・でも・・・転ん・で・・・たべら・・れなく・・・なっちゃ・・た」
手中の白い箱がカサリと揺れる。
「やちる。貸してみ」
「・・・ひっく」
「あちゃー、ペチャンコ」
「うっく・・・」
あたしが怖くて開けられなかった箱の中は、やっぱり潰れていた。
「っ・・・・・ごめんね」
「何でやちるが謝るんだよ。やちるが頑張って作ったんだろこのケーキ」
でも、でも。そのケーキは前の形がわからないぐらい潰れている。
「ぅん?うめぇじゃん」
「っ!?」
指についた残りのクリームをペロリとが舐める。
「まぁ、かたちはアレだけどよ。ふつーにうめぇぞ。
って!やちるどうした!?さっきよりも涙の量増えてないか!?」
そう言うの顔が涙でにじんで見えない。
「うわっ!俺なんかしたか!?このケーキやっぱ食べちゃだめだったとか!?」
違うよ。違うよ。
そう言いたいのに、声が口からでてこない。
口を開こうとパクパクしていると口の中に甘い感覚。
コロコロ転がる口の中。広がるのはイチゴあじ。
「でもまぁ、食べちゃったし。これで勘弁してくれよな」
そして額に暖かいモノ。
「っ!?」
「ほら、泣き止む。おわびに今日一日付き合ってやるから」
そう言って繋がれたのはの大きな手。
カラコロ、カラコロ。口の中には甘いキャンディ。
自分の額に手をやると、まだ暖かい。

あたしが『いい女』になるのは、まだまだ先そうだけど
――― それまで待っててくれる?

涙はいつの間にか止まっていた。







あなたがとってもだいすきなんです。









Titel by 凛 《5 sweets》










06.02.01