tea time




「おー。おかえり、ラグ」
ザワザワとノイズ。ここは、夜想道13番地にある郵便館BEE-HIVE。通称ハチノス。聞こえてくるのは、ここいいる郵便館員やBEE、手紙(こころ)を託しにやってきた人たちの声。
配達から帰って来たタグに声をかけたのは、手に持っているバナナセーキを飲みながらやってきた青年だった。
「あっ。さん!ただい――」
「おかえり、ニッチー。今回の配達でちゃんと手紙届けられたか?怪我とかしてないか?ラグにひどいこと言われてないか?ちゃんと食わせてもらってるか?」
さん!」
「あ、コレいるか?」
自分の後輩の声を無視して、息継ぎなしで言葉を言い切ったはニッチにさっきまで飲んでいたバナナセーキを差し出す。
さんっ。ニッチにひどいことなんて言いません!それに手紙を届けるのは僕の仕事です!」
ラグが声を荒らげて言うも、はさらりと受け流し視線はニッチから外すことはない。
「なぁーラグー。ニッチを俺の相棒(ディンゴ)にしちゃいけねぇか?」
「ッ!な、さんには、もう相棒がいるじゃないですか!」
「だって、ニッチは魔訶だし、強いし、女の子だし、かわいいし。時には遠くまで手紙を届ける相棒との二人旅。花があった方がいいだろ?ほら、さ、俺の相棒はおまえらのステーキみたいにさ、一緒に連れてけばいいし」
「ダメですっ!」
「ほら、ニッチー、俺とラグどっちがいい?ベーコンもステーキに負けずに劣らずおいしそうだろ?」
さん!自分の相棒をおいしそうだなんて言わないでください!」
「なぁニッチ、俺と行こうぜー」
ぷらーんと、こんがり焼けたようなキツネ色の毛並みを持つ自らの相棒を持ち上げながら、はニッチに尋ねる。
「ラグ、これおいしい」
が、ニッチから返ってきたのはがあげたバナナセーキの感想だった。
「ニッチー、俺と一緒に行こうぜー」
「ダメですってばっ!ニッチも何か言ってっ!」
「ニッチはラグの相棒だ」
ガクリ。が肩から崩れ落ちる。
「うわぁー、一世一代の告白を拒否されたぁー。俺、ショックで仕事ができねぇかも…」
「一世一代って、さんニッチに会うたびに、これ繰り返してるじゃないですか!」
「…そうだっけ?」
「そうですよ!」
「そっか、じゃ次会ったときもリベンジしよう」
自分でうんうんと頷いて、ニッチに目線を合わせてしゃがんでいたは立ち上がり、んっと背伸びをする。
「じゃぁ、俺も仕事行くかー」
「えっ?さんこれから仕事なんですか?」
「そうよ。俺、これでも一応優秀なBEEですから」
「そうですか…」
ラグの声色がこころなしか少し下がる。
これでもはBEEにいる数少ない重荷を運ぶ郵便配達員だ。
ただでさえ数が少ないのに遠くまで荷物を運ぶことが多いので、なかなかハチノスへは帰ってこない。帰ってきてもすぐに次の仕事が、ということも多いのだ。
(せっかく会えたのに。もう少し話をしたかったな…)
たとえが自分にかまってくるのは自分と一緒にいるニッチのついでだと知っていても、を兄のように思っていたラグは少し寂しく感じる。
「さぁ、ベーコン行くぞ」
ステーキとじゃれあっていた自らの相棒に声をかけ、ゆっくりと歩き出した
(お仕事だから仕方がないけど。行ってしまうんださん…)
ポンとそんなラグの頭に何かがのせられた。
「じゃーな、ラグ。おまえも自分の仕事頑張れよ」
ぐしゃぐしゃと乱されるように撫でられる頭。
そのまま、はベーコンを引き連れて扉の方へ向かう。
「…ッ!さんお仕事がんばって下さい!」
「おぅ!ラグ、おまえもニッチに怪我させたらただじゃおかねぇからなー!」
閉まっていく扉、最後に「おまえも怪我すんなよー」との声が聞こえたような気がして、ラグはに撫でられた頭を触った。

「ラグ、これなくなった」
「あぁ、飲んじゃったんだね。ニッチそれ気に入ったの?」
「うむ。うまかった」
「そっかー。じゃ、新しいの買いに行こうか」
ニッチの手の中にあるが好んでよく飲んでいるのを見かけるジュースのパック。
自分もさんも仕事があって忙しいけど、今度会ったらゆっくりとが好きなジュースを飲みながら三人で談笑したいな。と思った。


手紙(こころ)」を届けるテガミバチ。
おいしいお茶とお菓子を用意して、大切な人とゆっくりした時間を過ごしながら、ちょっと休憩。










07.10.13