ガウン。暗い闇の中、静かに響くのは銃が火花を散らす音。 ガウンガウンガウンと。鼓膜を揺るがすそれは、一発だけではなくいくつもの音が重なったもの。 「amл―― geйёnbшt・・・」 「アァァァアァアア!」 その銃口が向けられているのは、聞いたことのない言語を口ずさむ少年ただ一人。 しかし、何発もの弾丸が少年の方へと走るも、少年のもとへそれが届くことはない。 「無駄だつーの」 「・・・・・・」 「アァァァ!」 ビクンと、弾丸を打ち込まれた身体が跳ねる。 つんと鼻を突くのは、肉を腐らせたような腐臭。 弾丸を脳天に撃ち込まれ、即死したと思われる男の身体がゆっくりと起き上がった。 その目には光などあらず、もう死んでいることが分かるその男はゆらりと少年の盾となり歩き出す。 「アァァアアァァ――」 少年を取り囲むように人がゆらゆらと連なる。ゆらゆらゆらゆらゆらゆらと。 銃を持った黒服の集団は恐怖に叫ぶことしかできない。 ぐしゃりと。少年を取り巻く一体が崩れ落ちた。目は腐りかろうじて一つの肉によってぶら下がり、口からはだらんと伸びた舌がのぞく。 「あーあ、やっぱり新鮮な死体じゃないと動かしにくい。まぁ、いいか。まだまだ替えはあるんだし」 少年の呟く言葉は黒服には届かない。 「アァァァアァァ」 壊れたラジオのように黒服たちは叫ぶ。銃を乱射しても少年は歩みを止めない。少年の歩みの先は自分たち。 ゆらりゆらり、腐臭をばら撒きながらもと人であった人形は何回も立ち上がる。 あるものは頭が半分なく。あるものは臓器をはみださせながら。あるものは腐敗液を撒き散らし。あるものは―― 黒服を着ている。 それは、元黒服たちの仲間であり、先ほど少年によって殺された者。 「アアァァァアァ」 がしり。 後退していた黒服が何かに躓き尻餅をついた。足にぞわりと言う感覚。 ゆっくりと視線を下に向けると、そこには―― 土と同じ色をした人間の手。 「アアアァァアアァ!」 「おまえらさっきからうるさい。叫ぶことしかできねぇのか」 ずぶりと。黒服の一人の身体が土の中へと沈んでいく。 「まぁ、いいか。もう喋ることなんてできないだろうし」 ―― 再見。 さよなら。それだけ少年が言うと少年の目の前にいた黒服はもういない。 その黒服のほかの仲間たちも少年の人形によってすでに朽ちていた。 「あいかわらず、の戦い方は惨憺としてますね」 くふふと笑いながら、骸は屍の中に立つに近づく。 「そうか?」 「えぇ、殺しても殺しても生き返ってくる。相手にとっては恐怖という感情しかないと思います」 そういって骸は笑みを深くする。 それには相手の仲間でさえ死体なら操ることができる。今まで一緒に戦っていた仲間、それも死んだと思っていた者から銃口を向けられるのはどういう気持ちなのだろう。 ――― 本当にいいものを手に入れた。 骸は自分の言った言葉の意味がわからないのか首を傾げるを見て思う。 「人を操り、人を殺す。考えられませんよ」 「骸も人を操れるじゃねぇか」 「まぁ、そうですけどね。僕の場合、契約を結んだ人しか操れませんし、まして意識のない人を操るなど・・・。それがにはできるでしょ?」 ゆっくりと骸はに言葉を向ける。 「おれは生き人を操ることなんてできないけどな、操るのは死人だけ」 の答えに骸は目を見開く。そして、口から出てきたのは高笑。 「クハハハハ!!そうですね。生者は僕が操り、死者はが操る。素晴らしいじゃないですか!僕の目的も予想以上に早く達成できそうだ!!」 笑い声は闇の中に響く。 そんな骸を見つめながら、ぐしゃりと。を取り囲んでいた人形が崩れ落ちた。 「・・・・骸。で、これからどうするんだよ」 人形はもう事切れたように動かない。 動いているのは骸とだけ。 笑いをおさめて、骸はを見る。 「クハハ、そうでしたね。が手伝ってくれたおかげで全て上手くいっています。犬や千種たちも、もう脱獄したころだと思いますし。次は――」 日本、ボンゴレ十代目を手に入れますよ |
07.04.30
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