「で、お前はなんで此処にいるんだ」 目の前の閉じられているカーテン、それを勢いよく開けてここ保健室の主はその先を睨む。 「せんせぇー。そりゃ、体調がわるいからに決まってるじゃないですかー」 間延びしたような声で言葉を返すのは、ベッドにうつぶせに横たわっている青年。 その青年の返答に梅田のこめかみに青筋が一本浮かんだ。 「ほぉ、。俺にはお前が体調が悪いようには見えないけどな?そして何度も言うように此処はお前のサボり場所じゃない。出・て・行・け」 「いやいや、マジで俺体調悪いからっ!」 「どこがだ」 「マジで悪いつーの。ッ腰痛ぇんだってば!」 「………」 南のやろーもやさしくしてくれればいいのに。とぶつぶつと言うのことを軽く無視をして、梅田はため息をついて自分の椅子に腰掛ける。 あきれてものも言えない。 「たしかに俺が南のアイス喰ったのが悪かったけど…それは南が俺のマンゴープリンこの間喰ったからで、つかなんで俺が下!?クソォ、マジ痛ぇ――― って、聞いてる!?」 「はいはい、聞いてるよ」 「うわ、ぜってえ聞いてなかったよ」 先生、保健室の先生なんだから俺のことなぐさめてよ。だらりとはベッドに四肢を投げ出す。 遠くから聞こえてくるのは、たぶん二時間目が始まったチャイムで、それを聞きながら、ということはコイツは一時間目からここにいるんだよな。と梅田は心なしか痛くなってきたような頭を押さえ、コーヒーを入れに立ち上がった。 「で、お前何時まで此処にいるつもりだ」 「いつまでもー」 「………」 「だってさ、今日俺学校来る気なかったしー。SHR出ただけでもたいしたもんよ?」 南がうるさかったから仕方なくだけどなー。 「お前な…」 「それに次、数学だし。数学はあと…、今学期13回ぐらいはサボれるし」 「……、数えてるのか」 「そりゃねー。出席日数足りてて赤点とらなきゃ、大丈夫だって」 カラカラと楽天的に笑うを見て、本格的に梅田の頭が痛くなってくる。 「お前、そんなんで将来どうすんだ。大学行くのか」 「大学?それは大丈夫しょ。俺、スポーツ推薦とるつもりだし」 「サッカーでか。たしかお前、…ゴールキーパーだったか?」 「そうそう。俺すげぇんだから、飛んできたボールは必ずとるよ」 自分は陸上部の顧問だが、サッカー部でゴールキーパーをやってるやつの活躍ぶりは耳まで入ってくる。…勉強はからきしの癖に、コイツ運動神経だけはいいからな。 そんなことを思いながらできたてのコーヒーに口をつける。 でも、推薦枠でもゴールキーパーは枠が狭くなかったか?そんなことを梅田が思っていたのが伝わったのかは口を開いた。 「まぁ、サッカーがダメでも。どっかのアイドル事務所とか。俺、顔だけはいいし」 「…おい」 たしかに、この学校はそこらのアイドル事務所に負けないぐらいの美形がそろってはいるが…。 頭痛薬は何処に置いたか、なんて考え始める。 「それかー、―― 先生のとこに嫁いでもいいし」 「………」 スポーツカー持ってるぐらいだから金持ちだろ。俺アレに一回乗ってみたかったんだよなー。なーんてな、嫁ぐつーのは冗談だけ――― 「……せんせ?ちょ、何馬乗りになってんの!」 「お前さっき、保険医なんだから慰めろって言ったよな?」 「い、い言ったけど、なに!あれは、口からぽろりと出た言葉でっ!それに、ほら俺、腰痛ぇから勘弁!て言うか、なぐさめるの意味がちがッ!」 「冗談もほどほどにしとけよ?それに、いっつも学校サボるヤツにはお仕置きぐらいしないとな」 ギャー!! |