「起きなよ」 「ん、むぅ」 「・・・はぁ。(こんなヤツ、拾ってこないほうが良かったかも)起きなよ。僕もう出るからね」 「・・・・ん・・」 身体を叩かれて、意識が浮上する。視界が明るい光に包まれるけど、まだ頭は働きださない。ぼーとしながらゆっくり目を開ける。ふわふわな布団が気持ちいい。あー。俺の家の布団ってこんなにふわふわしてた?心なしかいい匂いが漂ってくる。なんかパンかなんか焼ける匂い。え、あー。俺って一人暮らしじゃなかったけ?(時々フェオやウルが押しかけてくるけど)ん、じゃぁなんでいい匂いがしてくるんだよ。え・・・・あっ!勢いよく起き上がると、ゴカンといい音がして頭の中がシャッフルされる。イテェ!!痛みにもだえて目をパチリと開けると目の前に同じように頭を抑えたヒバリサマが。ゆっくりとこっちに向けられる視線が怖い。 「いい度胸してるね」 俺に向けられた視線には、あきらかに怒気が含まれていて。 「咬み殺すよ」 「(ギャース!!)」 頭の横をかすめるトンファー。俺はそれはそれは爽やかな朝を迎えたのでありました。(もう、ヤダこの世界!) と言うわけで、すばらしい誘導尋問を受け(イヤ、目の前の餌に釣られた俺がわるいんだけどさ)(でも、野宿はイヤだったんだよ!)、ヒバリの家でお世話になることになった俺。念云々の話は置いといて、違うところから来たってこととある程度しないと元のところに帰れない。と伝えるとヒバリは「へぇー」と呟いて、面白そうに笑った。(どうやら気に入られたらしい)で、俺が手に入れたのはふかふかの布団とおいしいお食事。いまは学校に行くというヒバリに引っ付いて朝も早くからパンを片手に登校中。あれだ、あれ。なんでパンを片手に登校中なのかと言うと、朝俺が起きれなかったから。置いてかれたらすっげぇ困るし。 それにしても、ホント学生は大変だよな。朝も早くから登校して、毎日、文字や数字とにらめっこだろ。(俺は学校行ったことないからわかんねぇけど) 「(うへぉ!?)」 ガコンと人が壁に当たる音がして、人が伸される。てか、ヒバリってマジでフェオと張れるって。学校に行く途中に積み上がっていくのはヒバリにトンファーで伸された奴ら。気に入らない奴らをボコボコにして我が者顔で学校へと足を進めていく。そんなヒバリに俺は関わらないでいいよう少し後ろを歩いていった。だって殴られるのイヤだし(昨日から身体にアザが増えまくり)、付いて行かなかったらまた路頭に迷う! 「――― けど――れるの?」 「あへ?」 「僕にもう一度言わせるの?」 「(ヒッ!)すみません!」 向けられるトンファーに速攻で誤る俺。なんか俺って肩身が狭いつーか。(お、俺ってヒバリより年上だよな?)そんな俺に「しばらくしたら帰れるって言ってたけど、実際どれくらいしたら帰れるの?」とヒバリはトンファーを下に下ろした。 「あー。今日かもしれねぇし、明日かもしれねぇし。一週間後かも?」 「なにそれ(・・・最初は面白いと思ったんだけど。やっぱり厄介なヤツ、拾ったかもね)」 「んー。なにそれって言われても。俺にもいつ帰れるようになるのかわかんねぇし」 「家族とか心配してないの」 「俺一人暮らしだから。会社の奴らも心配するわけねぇ・・し?・・・・ッ!」 「(・・・?どうしたの、いきなり震えだして)」 「そ、それなんだよっ。ど、どうしよう」 「ちょっと、落ち着きなよ」 ガッ! ヒバリさん痛いです。止めるなら、もっとや、やさしく・・・。いま鳩尾に完全に入りましたよ。アザ追加ですよ。素敵に無敵にトンファーを振り回して俺の動揺を止めてくれたのはいいんですけどね。なんかアナタ間違っているような気がします。お腹を抱えて唸っていると、「で?」と言ってくるヒバリ。オマエいつも上からものを言うな!(怖くて言えねぇけど) 「うっ、アイツらのことだから微塵も心配なんてしてねぇけど。・・・たぶん戻ったら、いつものごとく二倍の仕事を押し付けられるんだろうなぁと」 「ふーん」 ちょ!聞いたのはオマエだろ!!なんだその反応!俺は、俺は帰るのがすっげぇ怖ぇのに!一体どんな応酬が待っているかと思うと、いなかった分の給料なし+理不尽な仕事の量押し付けられるんだぞ。オマエ、足で使われるひとの気持ちわかんねぇだろうが!そうだった、ヒバリは使うほうだったな!ケッ 「着いたよ」 「へ?」 「だから、学校。僕は群れてるやつ咬み殺してくるから」 応接室に行っといてと、ヒバリはさらりと続けた。 「ちょ、ちょっと、待ったー!」 ぐわし。とヒバリの学ランを掴む。「なに?」とか言いながらヒバリが俺のことを睨んでくるけど、俺はそれどこじゃねぇ。ちょ、ヒバリおま、俺をこの状況の中に置いていく気か!?昨日云々で気付いたことだけど、ココは黒髪人口が多い。その中で俺はすっごい目立つ。さっきから感興が含まれた視線がぷつぷつと突き刺さっていたい。時々。「転校生?」や「留学生?」とか聞こえてくるけど。まず俺この学校の人じゃねぇから、と言うかこの世界の人でもねぇから。俺、静かに生きていきたいんですがっ!と言うか、この世界に来て一番最初にヒバリに会ったことから間違ってたのか!?置いていくな。と言う期待をこめた目でヒバリのことを見る。 「(なんか、ホント犬…)そこまで僕が、面倒見る義理はないから。寝る場所用意してやっただけで、僕に感謝しなよ」 「ギャー!置いてくなー!」 「(うるさい)」 俺が叫んだ代わりに、もらったお礼はトンファー一撃。うっと呻いている間にすでにヒバリはいない。ちょ、薄情者っー!叫んでみてもヒバリが帰ってくるわけねぇし。トボトボと歩き出す。うー、視線がチクチクいてぇ。入り口はあっちか?皆がぞろぞろと入っていくほうを見て、そっちに歩いていく。 「ダァー!!ココはどこだー!!」 俺の声が廊下に響いた。幸い、チャイムらしきものがさっき鳴って授業中だったから誰も廊下に出てこねぇけど。俺の声は虚しく響きわたる。大体俺は学校の地理がわかんねぇっつーに!てか地図ねぇのかよ地図!応接室は何処だー!!悪態をつきながら歩くけど現状は変わらず。さしても広くはない校舎内でプチ迷子だ。予想道理と言うかなんと言うか…校舎内で迷う俺。応接室の場所なんて覚えてねぇし!よく考えたら地図があっても文字が違うからどれが応接室かなんてわかんねぇんだよな。今更気付いた事実にガックリと肩を落とす。明らかに地図を見て進むより(読めねぇこともねぇけどすっげぇ時間かかるし)自分で勝手に進んで言ったほうが早い。 「ちゃお」 それに何だかヒバリが帰ってくる前に応接室にいなきゃいけない気がぷんぷんする。・・・・。ギャス!ぜってぇートンファ-が飛んでくる!そう遠くは無い未来に震える身体。もうホント応接室ってどこら辺にあったけ!?昨日はテンパってて覚えてねぇんだよ。その時パンと音がして弾丸が俺の顔すれすれを通っていった。 「(なに!?ちょ!俺、この世界来てからこんなんばっかじゃねぇ!?)」 ふりかえると黒い帽子を被った赤ん坊。うん。赤ん坊だな赤ん坊。黄色いおしゃぶりを首から提げて、足二本で立っている赤ん坊。 「って、赤ん坊!?(た、立ってるよ、赤ん坊っ!)」 「うるせぇ」 「(ギャ!)」 またもや飛んできた弾丸。と、と言うか赤ん坊がしゃ、喋ってらっしゃいますよ。なんかもうイロイロとパニックだ。そんな赤ん坊は俺のことを見てニヤリと笑ってきた。ギャース!な、なんて含み笑いが得意な赤ん坊だこと!子供のうちからそんな笑い方覚えてたらいい大人にはなれねぇんだよ知ってるか!?(拳銃ぶっぱなしてる時点でなんか違う気もするけど)ツッコミたいのを我慢して(またややこしいことになりそうだ)「なんですか?」とビクビクしながら尋ねる俺。(ホントもうこの世界ヤダ) 「お前、ここのもんじゃねぇな」 「ッ!(気付いてらっしゃる!)」 「それに、おれの弾避けるなんて只者じゃねぇ」 「(まぐれですってば、まぐれ!)(と言うか、赤ん坊なのに喋ってるっていうオマエの方が只者じゃねぇって)」 ジャキンと俺の額に当てられる銃口。そして、肌にヒシヒシと感じる威圧感。 「お前何処のもんだ?」 ヒッ。と息を呑む。 自分より強いヤツに会ったらまず逃げろ。即逃げろ。 コレが俺の辞書の一ページ目の一項目めにどデカく書かれていること。どんだけ目を凝らしてみても凝は使えねぇし、身体を包むオーラの欠片もない。本格的にやばいぞ。こんな至近距離で銃口向けられて、素で逃げられるヤツがいたら俺は拝んでみたい。念使えねぇし、マジ俺この世界来てから命の危険ばっかりだぞっ! しゃべるあかんぼうをみていまどきのあかんぼうはすごいとおもいました 07.02.21 |