かかとをならして、1.2.3.
それは夢の世界の扉を叩く音


銀の靴(わーるど・とらべらー)  in 並盛



「(ステキヘアーっ!)」

トンファー男に無理やり連れて行かれた場所は、どっか事務所みたいなところ。偉そうに椅子に腰掛ける男と向かい合うように俺も座っている。コトリと俺の前にお茶が出されて、ちらりと持ってきた人を見ると、な、なんとステキへヤーのお兄さんっ!うおー!リーゼントなんて絶滅危惧種がココに生息してるよ!

「君、名前は?」
「・・・どうして、お兄さんはリー――― っ!」

すいません。すいません。もう、どうしてお兄さんはリーゼントじゃないんですか?なんて野暮な質問しないので睨まないでください。俺の小さな心臓がさっきから悲鳴をあげています。

「もう一度だけ聞く。君、名前は?」
「・・・です」

ちょっと、俺っ!俺より年下の男になに恐縮してるの!?(やっぱり、あれだ。コイツから出てる俺様オーラには逆らえねぇんだよ!逆らったらホントどうなるのかわかんねぇんだよ!)

ねぇ・・・聞きなれない名前だね・・・赤ん坊の仲間?」
「赤ん坊・・・・?」
「知らないならいい」

てか、赤ん坊の仲間ってことは、赤ん坊筆頭?(この世界の赤ん坊はすげぇな!)首を捻らせながら出されたお茶を飲む。うぅ。すきっ腹にお茶が染みる。昼食取ろうと外でたらこの世界に飛ばされたしなぁ。ホントこれからどうしよう。いつになったら念が使えるようになるかわかんねぇし。カネねぇし。幸い言葉は通じるから良かったものの。

「で、君は何処から来たの?」
「うぐ!ゲホゲホ!(直球!!)(そして、俺が名前を教えた意味がねぇ!)」
「なにやってんの?(この子バカ?)」
「(うお!哀れむような目で見てくんなよ)ゲホッ」

器官にお茶が入って俺は涙目だ。持っているお茶を机の上に戻して息を整える。その間も俺のことを、呆れたように見てくるトンファー男。(今思ったけど、俺コイツの名前知らなくね?)なんだかすっごく自分が惨めに思えてくる。穴があったら入りたい。と言うか、今すぐ帰りたい。そんな俺にもう一度「何処から来たの?」と尋ねてくる男。アッチと苦し紛れに適当に指差す。でも男には通じなかったようで、俺を襲ったのは「ちゃんと答えないと咬み殺すよ」という言葉と、おまけにトンファー。トンファーは当てる気はないようで首寸で止められてるけど。めっちゃ怖ぇ、心臓に悪いんだよ!

「で?」

ぐぅ〜

「「・・・・・」」
「・・・・・あはは・・・(もう、イヤ!自分を呪い殺してぇ!)」

二人分の沈黙と、俺の腹の虫が鳴る音。もう、お腹は限界なのです!うぅ。泣きてぇよ。うなだれた俺に、男はため息を一つ。そして、こっちに何か投げてきた。それがポンと俺の頭に当たる。

「イテッ。(今度は何だよ)」
「食べなよ」

投げられたそれは、パンの袋。食べていいのか!?イヤ、なんと言われても俺は喰うよ。背に腹は変えられぬ!かぷりとそれに被りつく。あー、うまい。

「(・・・犬みたい)はぁ・・・質問を変えるよ。どうして校門前にいたのさ」
「ふぁふぉーふぃ、ふぁふぉふぁ」
「食べ終わってからでいいから」
「(ゴクン)路頭に迷った」
「・・・・・」
「(イヤ、間違ってはいないよな。宿ねぇし、カネねぇし)」

またため息を一つついてバカか?と言う視線を俺に向けてくる男。(ぜってぇ、コイツ頭だいじょぶか?なんて思ってるよな)

「家は?」
「(この世界には)・・・ない」
「・・・・・(何処にあるかって言う意味で聞いたのに・・・)」
「・・・・・(なんで顔が歪んだんだ?)」
「じゃ、これからどうするの?」
「・・・野宿できるところ探し?」
「「・・・・・」」

しばらくの沈黙の男が「家出?」と尋ねてくる。それに一瞬驚いた後、俺は勢いよく頷いた。正確には家出じゃないけど、他の世界からきました!なんて言ってこいつ医者に行ったほうがいいんじゃないの?と思われるよりいい!(いい言い訳を思い浮かばなかったらしい)(う、うるさいな!!)目の前の男が足を組みかえる。(うお、それだけの動作でも様になってるからすごいよな!)

「じゃ、僕の家にくる?」

一瞬思考が止まった。・・・・。ッ!ってことは野宿しなくていいってこと!?ダンボールや新聞紙探し回らなくていいってこと!?公園の住人さんとお友達にならなくていいってこと!?な、なんてステキな!そう思った瞬間俺はさっきよりも勢いよく頷いた。と、とにかく屋根があるところで寝られればっ。メシとかは・・・たぶんどうにかなる!なんとかなるかも!という嬉しさに浸ってたら、なぜかまた俺の首筋にトンファーが。あれ?あれれ?目の前の男の雰囲気も柔らかいものから刺々しいものに。

「その変わり、ホントのことを聞かせてよ」

う、嘘をついたのがばれてらっしゃる!(そう言えばフェオが俺の嘘はわかりやすいって!)コ、ココは、ホントのこと言ったほうがいいのか?!それとも、な、何か言い訳を!・・・・。ダメだ、俺のちんけな頭じゃいい案が思い浮かばねぇ!ギャー!どうしよう!?強くトンファーが押し付けられ、より一層睨まれる。

「で?」

すいません。無理でした。
















とりさんはゆうどうじんもんがとくいでした
06.11.23